スチナ位になっているかも知れない。
 だが、シッソン、ウイードあたりから、仰ぎ見るシャスタの偉大さは、アルプス式の山々に見ることの出来ない鮮明美がある、孤にして閑である、独にして秀で、単にして完《まった》き姿である。日本アルプスでも、そうであるが、アルプス式の山は、高台の上に乗っかって、群峰になっているから、槍ヶ岳とか「マッタアホルン」とかいう特異の山形を除いたら、遠くからは、どれがどれやら、個々の山名がちょっと解り兼ねる場合もあるが、シャスタはそうでない、富士もそうである如く、一見|分明《ぶんみょう》である、足許《あしもと》から山上までの直径の高さは、モン・ブラン以上である(移民時代の一愛山家は、「シャスタに登ってモン・ブランを笑ってやれ」と言った)。その立体構成面の威嚇《いかく》的偉大さを、駭《おどろ》くべき簡単なる曲線で、統整して、しかも委曲に至っては、富士で謂《い》うところの八百八谷の線から、おのずと発生する凹凸面の、複雑なる入り乱れのために、眼もあやになることを如何《いかん》ともしがたい。
 私たち一行四人は、九月九日の夕、シッソンに着いて、駅前のパアク・ホテルというのに泊っ
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