火と氷のシャスタ山
小島烏水

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)偏《かたよ》り

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一番|先《さ》き
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 山仲間から、アメリカで好きな山は何か、と聞かれると、一番|先《さ》きに頭に浮ぶのは、シャスタ山である。がそれは必ずしも、好きであるからではない、位置が南に偏《かたよ》り過ぎて、雪が早く融けるし、氷河は小《ち》ッぽけな塊《かたまり》に過ぎないし、富士山のように、新火山岩で、砂礫《されき》や岩石が崩れ易《やす》いので、高山植物は稀薄であるし、「好き」になるところまでは行かないが、それでも、最も多く心を惹《ひ》かれる山である。何故《なぜ》というに、キャリフォルニアからオレゴン州への、境近い街道に、山が聳《そび》えて、複式二重の成層火山、シャスタとシャスチナと、二人の容姿端麗なる姉妹が、見る角度に依《よ》っては、並んで手を繋《つな》ぎ合ってもいるし、また背中合せに丈《たけ》くらべをしているようでもあり、何となく人|懐《なつ》かしい山に見えるからである。その麓《ふもと》を汽車が通っていることは、丁度《ちょうど
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