八五二年のことで、この辺の山としては、遅い方でもなかったが、あとから探検された他州(ワシントン州)の、レイニーア山の方に国立公園を取られてしまい、レイニーア山に関しては、詳細なる地形図、地質図や、一般民衆向きの、要領を得た説明案内などが出版せられて、世の中に紹介されているが、シャスタには、未だそういうものは、何にも出ていない(あたかも富士山が「天地の別れし時ゆ神さびて」とか、古くから言われていながら、今日では、ややともすると、最近発見の日本アルプス上高地あたりに、国立公園を、お先に奪われそうな形勢であるが如くに)。第二にシャスタ山は、初めは海抜一万四千五百尺と測られて、米国最高の山と信ぜられていたのに、その方は、今では、シエラ・ネヴァダのマウント・ホイットニイに、最高の位置を取られてしまい、精密なる実測の結果は、一万四千一百尺に減じて、レイニーアの一万四千四百尺に比してすら、下位に落ちてしまった(あたかも日本最高の富士山が、久しく信ぜられていた三七七八|米突《メートル》という高さが、最近実測の結果、たとい二米突ばかりにしてもかえって減少して、いよいよ台湾の新高山《にいたかやま》の下位に
前へ 次へ
全20ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小島 烏水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング