半周した、約四分の三まで廻《まわ》った。かくて視《み》たところを綜合して言えば、山の頸部は、三十五度の傾斜から、次第に緩和して二十度、十五度、十度と、延《の》んびりした線を、大裾野へ引き落し、末端は五度位にちぢんでいるが、富士山の如く、草山三里、木山三里、石山三里という割り当ては、シャスタには応用出来ない。草山は、まあいいとして、木山はシャスタでは、谷地帯《やちたい》になっているし、殊《こと》に石山に該当するところは、万年雪と氷河の喰い込みで、岩頸《がんけい》は、篦《へら》でえぐったように「サアク」の鈴成りが出来ているから、サアク帯と呼ぶ方が適当である、その「サアク」からは、言うまでもなく、氷河が流れていて、九千尺以上に五個あるという話であるが、私の望んだのは、ホイットニイ氷河と、南方のマック・クラウド氷河の二つである。前者は前にも述べた通り、シャスタとシャスチナの間の、鞍部《あんぶ》に懸垂《けんすい》しているが、アルプスのベルニーズ・オーバアラント山地あたりの大氷河に比べると、恐らく雛形《ひながた》ぐらいの小さいものだろうが、それでも擬似《ぎじ》氷河ではない。小さいなりに、完全な真氷
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