河であることは、「クレッヴァス」の凹凸《おうとつ》が、かなりの遠くから肉眼でもハッキリと見えるし、大氷河でなくては、滅多に見られないところの、側堆石までを具備しているのでも伺われる、終堆石《しゅうたいせき》は弦《つる》の切れた半弓を掛けたように、針葉樹帯の上に、鮮明に懸《か》かっているのみならず、そこから流下した堆石は、累々として、山麓《さんろく》に土堤を高く築いている。ただ巨大な堆石が、現在見当らないのは、何分にも、氷河が小さく、谷の削り方も浅くて、「剥《は》ぎ取り」が、深く利《き》かないためであろう。もう一つのマック・クラウド氷河の方は、現在では最小の氷河であるが、山麓同名の村に、「マッド・クリーク」という小流があって、その岩壁には、氷河の引ッ掻《か》いた条痕《じょうこん》が、鮮明に残っているところを見ると、昔は今よりも、大きな氷河であったらしいことを示している。
 要するに、シャスタの氷河は、この山の属するキャスケード山脈の最南端だけあって、キャスケードの氷河としては、一番小さいものであることに疑いはないが、仮に、富士山の氷河が成立したとしたら、あるいはまた、日本アルプスの劍岳や
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