白ッ茶けた草や、マンザニタと呼ばれるところの、灌木《かんぼく》などが茂って、馬蹄の砂が濛々《もうもう》と舞いあがるのには、馬上|面《おもて》を伏せて、眼をねぶるばかりであった。
それでも、森林帯に入るとさすがに涼しい、中でもシャスタ樅《もみ》と呼ばれる喬木《きょうぼく》の一種は、この山、特有とまでゆかなくても、この山の産として最も名高いのであるが、富士の落葉松《からまつ》を、富士松と呼ぶたぐいであるかも知れない。なお登ると、俗にホワイト・バーク・パイン(白皮松)と呼ぶ喬木が出てくる、高さは二百尺位に達するのは珍らしくはない。土地の人たちは、この森林帯の立派さを艶説《えんぜつ》しているが、レイニーア火山や、ベエカア火山の、それに競べると、さほどの物ではない。ホールス・キャムプという平地に出で馬を下り、野営の仕度をする、海抜九千尺、水も少しはある。今は(一九二二年の春から)このところに「シャスタ・アルパイン・ロッジ」という、立派な山小舎が建設されたそうで、毎年六月十五日から九月十五日まで「小舎開《こやびら》き」をやって、一年に四、五百人の宿泊者は、欠かさないという話であるが、私たちの登っ
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