》ができるのです。いつも「明日」と同盟[#「同盟」に傍点]する人は「今日」の貴さをほんとうに知らない人です。いつも「明日」と約束する人は、「今日」を真に活《い》かさない人です。
ローマの哲学者ポエチウスは牢獄《ろうごく》のなかで死刑の日を前にして『哲学の慰め』というりっぱな本を書いていますが、これに似た話が中国にもあります。今からちょうど千五百年以前のことです。中国に僧肇《そうじょう》という若い仏教学者がありました。彼は有名な羅什《らじゅう》三蔵の門下で、三千の門下生のうちでも、特に優《すぐ》れたりっぱな学者でありました。しかし、ある事件のため、時の王様の怒りに触れて、将《まさ》に斬罪《ざんざい》に処せられんとしたのです。その時、彼は何を思ってか、七日問の命乞《いのちご》いをいたしました。彼は、その七日間に、獄中において、みんごと『法蔵論』という一巻の書物を書き上げました。そして、従容《しょうよう》として刑場の露と消えたということです。時に彼三十一歳、その臨終の遺偈《いげ》は、まことにりっぱなものであります。「四大|元《もと》主なし。五|陰《おん》本来空。首《こうべ》を以《もっ》て白
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