しい面があります。また謡曲《うたい》の中には「あらあら恐ろしの般若声《はんにゃごえ》」という言葉もあります。それからお坊さんの間ではお酒の事を「般若湯《はんにゃとう》」といいます。またあの奈良へ行くと「般若坂」という坂があり、また般若寺というお寺もあります。日光へゆくとたしか「般若《はんにゃ》の滝《たき》」という滝があったと思います。こういうように、とにかく般若という語は、われわれ日本人には、いろいろの意味において、私どもの祖先以来、たいへんに親しまれてきた文字であります。しかし、この般若という言葉は、もともとインドの語をそのまま写したもので、梵語《サンスクリット》でいえばプラジュニャー、巴利《パリー》語でいえばパンニャーであります。ところで、そのプラジュニャーまたはパンニャーを翻訳すると、智慧《ちえ》ということになるのです。智慧[#「智慧」に傍点]がすなわち般若[#「般若」に傍点][#「智慧[#「智慧」に傍点]がすなわち般若[#「般若」に傍点]」は太字]です。しかし、般若を単に智慧といっただけでは、般若のもつ持ち味が出ませぬから、しいて梵語の音をそのまま写して、「般若」としたのであり
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