、題目と内容とが相応していないどころか、まるっきり違っているものも、かなり多くありますが、お経の名前は、だいたいにおいて、よくその内容を表現しているとみてよいのです。たとえば、経典のうちでも、特に名高いお経に、『|華厳経[#「華厳経」は太字]《けごんきょう》』というお経があります。これはわが国でも、奈良朝の文化の背景となっている有名なお経なのですが、ちょうど『心経』を詳しく『般若波羅蜜多心経』というように、このお経を詳しくいえば、『大方広仏華厳経《だいほうこうぶつけごんきょう》』というのです。さてこのお経は仏陀《ぶっだ》になられた釈尊の、その自覚《さとり》の世界を最も端的に表現しておるお経ですが、その「大方広」という語《ことば》は、真理ということを象徴した言葉であり、「華厳」とは、花によって荘厳《しょうごん》されているということで、仏陀への道を歩む人、すなわち「菩薩《ぼさつ》」の修行をば、美しい花に譬《たと》えて、いったものです。で、つまり人間の子釈尊が、菩薩の道を歩むことによってまさしく真理の世界へ到達された、そうした仏陀のさとり[#「さとり」に傍点]を、ありのままに描いたものが、す
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