ずえ》には、いつの間にやら再び綺麗《きれい》な美しい花をみせています。かくて年を迎え、年を送りつつ、たとい花そのものには、開落はありましても、桜の木そのものは、依然として一本の桜[#「一本の桜」に傍点]です。
 一休と山伏[#「一休と山伏」は太字] ある日のこと、ある山伏《やまぶし》が、一休|和尚《おしょう》に向かって、
「その仏法はいずこにありや」
 と、詰問したのです。すると和尚は即座に、
「胸三寸にあり」
 と答えました。これを聞いた件《くだん》の山伏、さっそく、懐中せる小刀をとり出し、開き直って、
「しからば、拝見いたそう」
 と、つめよったのです。そこは、さすが機智《きち》縦横の一休和尚です、すかさず、一首の和歌をもって、これに答えました。

[#ここから2字下げ]
としごとにさくや吉野のさくら花|樹《き》をわりてみよ花のありかを
[#ここで字下げ終わり]

 これには勢いこんでいた山伏も、とうとう参って、その後ついに和尚の弟子になったということです。
 空なる状態[#「空なる状態」は太字] まことに、因縁より生ずる一切《すべて》の法《もの》は、ことごとく空です。空なる状態に
前へ 次へ
全262ページ中58ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
高神 覚昇 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング