とても掘ることができない」とまでいわれた、あのテームス河の河底を、彼は、りっぱに開鑿《かいさく》しておるではありませんか。地下鉄道と船喰虫[#「地下鉄道と船喰虫」に傍点]! なんの因縁もなさそうです。しかし実は、因縁がないどころか、たいへん深い因縁があるのです。おもうに、因縁によってできている一切の事物、五蘊の集合[#「五蘊の集合」に傍点]、物と心の和合によって、成り立っている、私どもの世界には、何一つとして、永遠に、いつまでも[#「いつまでも」に傍点]、そのままに[#「ままに」に傍点]、存在しているものはありません。つねに変化し、流転しつつあるのです。仏陀は「諸行無常」といいました。ヘラクライトスは「|万物流転[#「万物流転」は太字]《バンタ・ライ》」といいました。万物は皆すべて移り変わるものです。何を疑っても、何を否定しても、この事実だけは、何人も否定できない事実です。咲いた桜に、うかれていると、いつのまにやら、世の中は、青葉の世界に変わっています。
 一期一会[#「一期一会」は太字] もはや、五月《さつき》の空には、あの勇ましい鯉幟《のぼり》が、新緑の風を孕みつつ、へんぽんと勢い
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