は則《すなわ》ち十四、謂《い》うべし、簡にして要、約にして深し」
 といっているように、全くこんなに簡単にして明瞭なお経は決して他にないのであります。
 天下第一のお経[#「天下第一のお経」は太字] 次にまた、その名前のよく知れ渡っているという点では、あの『論語』にも匹敵するのであります。そして論語が天下第一の書といわれているように、この『心経』もまた昔から天下第一の「経典」といわれているのであります。とにかく、仏教のお経といえば『心経』、『心経』といえば仏教を聯想するというほど、このお経は、昔からわが日本人とは、きわめて縁の深いお経なのであります。
 絵心経のこと[#「絵心経のこと」は太字] 今日『絵心経《えしんぎょう》』といって、文字の代わりに、一々絵で書いた『心経』が伝わっておりますが、これは、俗に『めくら心経』、または『座頭心経《ざとうしんぎょう》』などとも申しまして、文字の読めない人々のために、特にわざわざ印刷せられたものでありますが、それによっても、古来いかに広く、この『心経』が一般民衆の間に普及し、徹底しておったかを知ることができるのであります。ところで、今回お話し申し上
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