食うだけで、人間は決して満足しているものではありません。食糧飢餓の今日、人はあまりに食生活のために貴い人間の霊性を見失っているような気がいたします。敗戦後の日本人は、ひたすら食物を探《さが》し求める犬や猫《ねこ》のような存在になったようです。しかし、新しい日本を建設し、創造するには、お互いはとくと考え直さねばなりません。それは物質上の破産を、いかにもそれが人間の破産のごとく考えて、心の破産の重大なることに気づかないということです。「物の貧困[#「物の貧困」は太字]」よりも恐ろしいのは「心の貧困[#「心の貧困」は太字]」です。「本来は無一物なり雪だるま」たとい戦災で物を喪失しても、もともと裸で生まれてきたのですもの。将棋の「金」から「歩《ふ》」に帰っただけのことです。歩は当然また金になれるのです。
 恐ろしいのは心の喪失です。心の貧困です。いったん心を失ったものは、たやすくとり戻《もど》すことはできないのです。私どもは外面的に、貧困防止の方法を考えねばならぬと同時に、いやそれ以上に内面的に、心の貧困を克服すべく努めねばなりません。「人間は食う動物だ」といった、かのフォイエルバッハは、また
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