実に面白いのです。
「いかにも君らは重大な役目を持っている。食物を摂《と》り、呼吸をし、ものを看視していてくれる君たちのご苦労には、実に感謝している。しかし、今日改まって君たちから、『君の役目はなんだ』と問われると、全くお恥ずかしい次第だが、何をしているのか自分ながらこれだといって答えられない。ただ祖先伝来、ここにいるというだけで、日夜すまぬすまぬとは思いつつ、まあこうして、一所懸命に自分の場所を守っているわけだ。君たちは各自《めいめい》他に誇るべき何物かを持っているだろうが、僕には誇るべき何ものもないのだ。何をしているか、と問われると、お恥ずかしいわけだが、なんと答えてよいやらわからない」
というのです。最後に作者は、こういう言葉をつけ加えております。
「自分は今日まで口と鼻と眼の心懸《こころが》けで暮らしてきた。しかしそれは間違っていた。今後は、ぜひ眉毛の心懸けで[#「眉毛の心懸けで」に傍点]、世を渡りたい」
まことに子供だましのような、つまらぬ馬鹿らしい話です。しかし味わってみるとなかなか意味のある話だと存じます。眉毛の態度はちょっと見ると、いかにも無自覚で、自覚なきがごとく
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