いいます。まさかと思いますが、とにかくこれにヒントを得て作られたのが、あの「茗荷宿[#「茗荷宿」は太字]」という落語です。ところで、その周利槃特の物語というのはこうです。
彼は釈尊のお弟子のなかでも、いちばんに頭の悪い人だったようです。釈尊は彼に、「お前は愚かで、とてもむずかしいことを教えてもだめだから」とて、次のようなことばを教えられたのです。
「三|業《ごう》に悪を造らず、諸々《もろもろ》の有情《うじょう》を傷《いた》めず、正念《しょうねん》に空を観ずれば、無益《むやく》の苦しみは免るべし」
というきわめて簡単な文句です。「三業に悪を造らず」とは、身と口と意《こころ》に悪いことをしないということです。「諸々の有情を傷めず」とは、みだりに生き物を害しないということです。「正念に空を観ずれば」の「正念」とは一向専念です。「空を観ずる」とは、ものごとに執着しないことです。「無益の苦を免るべし」とは、つまらない苦しみはなくなるぞ、ということです。たったこれだけの文句ですが、それが彼には覚えられないのです。毎日彼は人のいない野原へ行って、「三業に悪を造らず、諸々の有情を傷めず……」とやる
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