やみ》の巷《ちまた》」だということは、たしかに真理です。世間でよく「四苦八苦の苦しみ」と申しますが、ほんとうに考えてみると、人生は四苦八苦[#「四苦八苦」に傍点]どころか、さまざまの苦しみ、悩みがあるのです。
 これについてこんな話があります。その昔ペルシャ(現今のイラン)にゼミールという王さまがありました。年若きゼミール王は、「即位」の大典をあげるや、ただちに天下の学者に命じて、最も精密なる「人類の歴史」を編纂《へんさん》せしめたのです。王さまの命令に従って、多くの学者たちは、懸命に人類史の編纂にとりかかりました。一年、二年はまたたく間に過ぎました。五年、十年は、夢のように過ぎました。二十年、三十年の長い年月を経ても、世界で最も「精密なる人類史」は容易にできません。四十年、五十年の長い長い時間を費やして、やっと書き上げた。その人類史の結論[#「人類史の結論」は太字]は、果たしてなんであったでしょうか。「人は生まれ[#「人は生まれ」は太字]、人は苦しみ[#「人は苦しみ」は太字]、人は死す[#「人は死す」は太字]」それが人類史の結論[#「人類史の結論」に傍点]だったのです。人は生まれ、人
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