ました。すると不思議にも「オーイ」という神さまのお声が聞こえてきたのです。「さては天上に神さまがいられる」と思いつつ、彼はなおもよく耳をすましていると、豈《あ》に図《はか》らんや、神の声は高い天上ではなくて[#「神の声は高い天上ではなくて」は太字]、低い地上から聞こえてきたのです[#「低い地上から聞こえてきたのです」は太字]。しかも多くの人たちが群集《ぐんしゅう》し、雑沓《ざっとう》している中から神の声は聞こえてきたのです。もちろんそれは一つの寓話《ファブル》でしかありません。しかしです。神の声はあった、だが、その声は、高い天上にはなくて、低い地上にあった。しかも、多くの人々の雑沓している、その群集の中にあったということは、そこに、ふかき「何物か《エトワス》」を物語っていると存じます。キリストは「天国を地上」にといっています。少なくともほんとうの宗教は、神の宗教ではなくて、人間の宗教です。天上の宗教ではなくて、地上の宗教でなければなりません。まことに、宗教のアルファもオメガアも、始めも、終わりも、結局は人間です。「迷える人間」より「悟れる人間」へ、「眠れる人間」より「目覚めた人間へ」、
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