。もとより小説のことであるから事実あったことかどうかはわからぬが、これなども錬金詐欺と見做《みな》してよく、恐らく支那の小説あたりからヒントを得たのであろう。
先年日本で万有還銀《ばんゆうかんぎん》説を建てた老人があった。これはもとより不正な動機で企てられたのではないが、助手の詭計《きけい》のために、錬銀術師自身が欺かれて居たことが、後に明かにされた。最近、長岡《ながおか》博士によって水銀から金の生ずることが証明されるに至って、錬金術の一部分が科学的に実現された訳であるが、まだ、このことを種に詐欺が行われたということは聞かない。藁から真綿を取る方法を発見して沢山の智識階級を欺いた男には、こんなことを聞かせぬ方がよいかも知れない。
今から三十年前にボストンで、ジャーネガンという牧師が、海水から金を採る方法を発見したと称して、大会社を建て、附近の大富豪の金を搾り取った話がある。詐欺師が牧師であったために、人々はまんまと一ぱい喰わされたのである。随分沢山の智識階級の人を網羅して居たけれどもやはり、みんな慾に眼が晦んで気がつかなかったのである。私は左に、近代の錬金詐欺師として最も有名なエド
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