の風習により、ある種族が定めた偶像例へば一定の動物とか植物とかは、其種族は之を食《くら》ふことを禁止し、若《も》し之を食したならば其の物は毒となりて、之を食したものに疾病を醸《かも》すなどの迷信も、これに加へることが出来よう。コンゴに住むイーキー民族は現今《げんこん》も「しまうま」の肉は食はぬ。むかしエヂプトに於ては、テベスでは羊を食はず、メンデスでは山羊《やぎ》を食はず、オムポズでは鰐魚《わに》を嫌つた。羅馬人《ローマじん》は啄木鳥《きつつき》の肉を食することを禁じた。エツヂストーン島では殆ど凡《すべ》ての疾病《しつぺい》は、禁ぜられた樹木の実を食べた為に起つたのだと考へられて居る。
二 植物性毒と迷信
原始人類に最も喜ばれた毒物は、何《いづ》れの地方にありても麻酔作用を有するものであつた。日本に於ても既に素盞嗚尊《すさのをのみこと》の時に酒があり、少彦名神《すくなひこのみこと》は造酒の神なりと言はれ、支那に於ても酒を以《もつ》て薬物の始《はじめ》とした。周《しう》の成王《せいわう》の時、倭人《やまとびと》が暢草《やうさう》を献じたと「論衡《ろんかう》」といふ書に見えて居り、
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