が》れた。帰途パーシユーズは、とある所に一人の少女の怪獣に襲はるるを救ひ、妻となして故郷に伴つた。
 国王はパーシユーズが決して無事で帰らぬものと思ひ、不在中母のダネイを挑んで止《や》まない。然《しか》しダネイがどうしても意に従はぬので王は大に怒つて之を殺さんとダネイの家に乱入する。丁度其処へ帰つたパーシユーズは、国王の前に立ち塞がり、「約束通りメヂューサの首をお目にかけよう」といひ様《さま》、不意に王の目に前に差し出すと、王の五体は立ち所に竦《すく》んでそのまゝ石と化して了つた。――ゴーゴンの伝説は之で終る。
 話は神話から実説に移る。毒蛇を説くものはエヂプトの最後の女王クレオパトラの臨終の模様を書き落してはなるまい。何となればクレオパトラは毒蛇に身を噛ませて自殺したと伝へられて居るからである。然しこれは果して事実であつたかどうかは千古の謎として残つて居る。
 アントニーとクレオパトラとの恋物語は今更茲に喋々《てふ/\》するまでもなからう。アントニーはオーガスタス帝の妹を妻としたが、クレオパトラの容色に魅せられて離縁すると、オーガスタス帝は怒つてクレオパトラに宣戦する。運|悪《つたな
前へ 次へ
全27ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング