ちすべ》らす。王は忽《たちま》ち、「それぢやメヂューサの首を持つて来て貰はう」と答へる。
 パーシユーズは口で言つたものの、さてどうしてよいかに困つて了つた。悄然《せうぜん》として浜辺に立つて居ると二人の貴人が其の前に現はれた。一人は大気の司《つかさ》アシーナの女神で、一人は伝令神マアキュリーである。パーシユーズの事情を察してマアキュリーは彼に海陸を自由に飛ぶことの出来る沓《くつ》を与へ、女神は彼に如何にしてゴーゴンに近づくべきかの方法を教へる。「先《ま》づ北の方《かた》氷寒界の彼方に蒼面白髪の姉妹を尋ね、それに迫つて、西の国で林檎《りんご》を戍《まも》れる三人の処女の在所を訊ねよ。処女はゴーゴン・メヂューサの首を獲《う》るに必要な三つの品を呉れるから、」といふのである。そこで例の沓を穿つて北に向ふと果して蒼面白髪の三人の姉妹の居る所に来た。この姉妹は三人で一つの眼を有し、物を視るときは互に貸しあふのである。丁度《ちやうど》一人が他の一人に眼を貸さうとする時、パーシユーズは突然其の眼を奪ふ。そして西の国なる三人の処女の在所を訊ねる。姉妹は容易に口を開かなつたが、最も大切な眼を奪はれて居
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