と真鍮の爪とを有し、若《も》し何人でも之《これ》を凝視するときは、忽《たちま》ち化して石となると伝へられて居る。ゴーゴンは姉妹《きやうだい》三人から成り、世界のある一端に住んで居たのであるが、そのうち二人は不仁身《ふじみ》で、斬《き》つても打つても死なないが、末の一人なるメヂユーサのみは、若し巧みに剣を用ひて急処を打つたならば、その命を奪ふことが出来ると言ひ伝へられた。
アルゴスの王女ダネイと其の息子パーシユーズとが、ある事情のもとに匣舟《はこぶね》に載せられて果しなき海に流される。幾多の恐ろしき暴風雨の後ある浜辺に漂ひ着いて一人の男に助けられ其の男の厚意によつて数年を暮す。するとその島の王がダネイに懸想《けさう》して手に入れようとしてもダネイは応じない。王はパーシユーズを遠ざけさへすればダネイの心を変へることが出来るであらうとて、ある難題を持ち出す。即ち島内の若者を呼んで、ある目的のために馬が必要だから馬を一疋づつ持つて来いといふ。パーシユーズには馬がないことを王は知つて居た。パーシユーズは困つて、「もつと尊《たふと》い物を求めて下さい。メヂューサの首でも自分は辞せない」と口辷《く
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