い関係のあることがわかり、況《いは》んや一旦病魔に冒さるれば、多くは毒の力でなくては恢復が出来ないに於ておやである。
人類の祖先は如何《いか》にして毒の存在を知り、その使用法を知つたか。支那では人神牛首《じんしんぎうしゆ》の神農氏《しんのうし》が赭鞭《かはむち》を以て草木を鞭《むちう》ち、初めて百草を嘗《な》めて、医薬を知つたといひ、希臘《ギリシヤ》ではアポローの子、エスキユレピアスが、草木土石の性質を会得して医道の祖となつたといはれて居るが何《いづ》れも神話中の人物で、もとより信ずべき筋のものではなく、長い間の経験と幾多の犠牲とを払ひ、其の間に或は他動物の本能的になす所を見たり、或は偶然の機会に依つたりして、毒に関する知識は発達して来たものらしい。
原始人類の知識状態又は生活状態を知るに最も有力なる手がかりは、現今世界に散在する未開地に住する蛮族《ばんぞく》に就《つい》ての研究である。其《そ》れ等《ら》の研究に依《よ》るに、彼等は何れも矢毒(即ち野獣を射て之《これ》を毒殺すべく鏃《やじり》に塗る毒)クラーレ、ヴェラトリンの如《ごと》き猛毒の使用を知り、併《あは》せて阿片《あへん》
前へ
次へ
全27ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング