と」皮肉を言はしめて居るが、いかにも宝石の顔を見せてニツコリせぬ若い婦人は先《ま》づ無さゝうである。(なほ「アミユレツト」や指環は悪魔の凝視を避けるためにも用ひられた)
以上の事柄は毒又は毒殺に少し縁遠いやうに思はるゝ読者があるかもしれない。然《しか》し乍《なが》ら現今でも欧洲の多くの婦人は「お守り《アミユレツト》」[#ルビは「お守り」にかかる]を懸けて居り、これはよく彼地《かのち》の小説の中に出て来るから「お守り」の由来を知つて置くのも強《あなが》ち無益でないと思ふ。ことに屡々《しば/\》この「アミユレツト」に関して犯罪の行はるゝことなどが探偵小説に書かれてあるから特に一言注意を促した訳である。
四 動物性毒と迷信(毒蛇)
動物性毒に関する迷信も甚《はなは》だ数多いが、就中《なかんづく》毒蛇に関しては古来色々の伝説が行はれて居るから茲《こゝ》に其《そ》れを説いて見ようと思ふ。人類が蛇を恐れるのは人類の祖先が(動物時代に於て)毒蛇に悩まされた経験が遺伝せられて居るためであると説明する人もあるやうであるがそれは兎《と》に角《かく》、何《いづ》れの国にありても古代の伝説に蛇が入つ
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