ら、こゝに鉱物性の毒に関する迷信を説かうと思ふが、前にも述べたやうに毒に纏《まつ》はる迷信には二種あつて、毒そのものに関する迷信と、他のものを毒(又は薬)と見做《みな》す迷信とに分《わか》つことが出来るから、この際には後者の場合即ち鉱物(茲《こゝ》に於ては石)が毒(又は薬)と見做された迷信のことを書いて見ようと思ふ。
 石を外科的手術に即ち鍼《はり》として応用することは、日本の神代《かみよ》から既に行はれて居たものらしく、支那へはこの術が日本から伝はつて行つたものであるとさへ一部の人々によりて考へられて居る。「薬石効なく」などといふ時の「石」の字は※[#「※」は「いしへん」+「乏」、読みは「いしばり」、第3水準1−88−93、94−11](いしばり)を意味して居るのである。外科的に石を使用することは別に迷信ではないが、欧洲で昔から磁石を毒と見倣したのは迷信である。凡《すべ》て珍らしい性質を持つものは、単純な頭脳の所有者にとりては、一の驚異であり従つて色々な迷信を生じて来る。磁石の如《ごと》きはまた一方に於ては不老長生の作用を有すると考へられ、ゼイランの王は常に磁石(磁鉄鉱)で作つた皿で
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