何がさて、たったこの二つきりの品によって解決しようとするのだから、なか/\困難だった。
「北沢が何人《だれ》に投書を依頼したかはわからぬが、とに角、投書は北沢の計画したとおりに投ぜられたにちがいない。ロマンチックな君は、きっと、北沢の投書の依頼を受けた人が誰であるかを知りたく思うであろう。その人を捜し出して、その人から北沢の真意をきゝ度《た》く思うであろう。無論あの投書が、偶然に無関係な人の手に入ったとは考えられないから、たしかに北沢に依頼された人がある筈だ。そうしてその人は、現にどこかで、警察や僕等の騒ぎを頬笑みながら覗《うかが》って居るにちがいない。それを思うと、君は腹立たしい気になるかも知れぬが、僕は然し、北沢が投書を依頼したという人には毫《すこし》も興味を感じなかったのだ。それよりも北沢の唯一《ゆいつ》の目的が知りたくてならなかった。
「而《しか》もその目的は、決して単なる人騒がせのためではない。何となれば、若し単なる人騒がせが目的だったら、もっと簡単な、そうしてもっと効果的な方法がある筈だ。だから北沢にはもっと厳粛な一つの目的があらねばならなかったのだ。
「ところが、そのよう
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