。すると先生は、机の上にあった小さな紙片をとり上げて、
「之がその解決だよ」と言って渡された。見ると其処《そこ》には、
[#ここから3字下げ、罫囲み]
PMbtDK
[#ここで字下げ終わり]
と書かれてあった。
「君、甚《はなは》だ御苦労をかけるが、それを都下のおもだった新聞に、あまり目立たないように広告してくれたまえ」
 僕は面喰った。
「これは暗号で御座いますか」
「理由《わけ》は君が帰ってから話す」
 僕はそのまゝ黙って引きさがり、それから各新聞社をまわって広告を依頼し、教室へ帰ったのは午後一時ごろだった。道々僕は、先生の渡された暗号――無論僕ははじめそれを暗号だと思った――を、色々に考えて解こうとしたが、まるで雲をつかむようだった。又、何のために、先生が新聞などへ広告を出されるのか、そうして、これが一たい北沢事件と、どう関係があるのか、ちっともわからなかった。だから、教室へ帰ったときは、早く先生から説明がきゝたくて、僕はいわば好奇心そのものであった。
 教授室に入ると、先生は立ち上って、入口の方へ歩いて行き、扉《ドア》の鍵孔に鍵を差しこんでまわされた。
「あまり大きな声で話して
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