利貸を殺した三十二歳の大工は、高利貸の頭蓋骨が鋸《のこぎり》で引き割られるとき、私の手にすがって、
「どうか、やめて下さい、私が殺しました」
 と白状しました。
 また、情婦を殺した人形製造所の職工は、雪のように白い女の腹部が、縦一文字に切り開かれたとき、やはり、私の手につかまって、
「もう沢山です。私が殺しました。早くあちらへ連れて行って下さい」
 と、声顫わせて叫びました。
 ところが、頑固な犯人たちは、どんな惨酷な解剖の有様を見せつけられてもびく[#「びく」に傍点]ともせず、中には気味の悪い笑を洩《もら》して、さもさも、被害者の解剖されるのを喜ぶかのような表情をするものさえありました。そういう人間に接すると、私は少なからず焦燥を感じて、何とかして苦しめてやる方法はないものかと、無闇に死体に刀《とう》を入れたのでありました。然し、白状しないものは、どうにも致し方がありません。この上はただ、もっと有効な方法を工夫するより外はないと思いました。
 熟考の結果、私は遂に第三の方法を案出することが出来ました。それは何であるかと申しますと、犯人の眼の前で死体を解剖し、その小腸を切り出して、そ
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