三つの痣
小酒井不木
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)痣《あざ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)先年|物故《ぶっこ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「土へん+壽」、第3水準1−15−67]
−−
一
法医学者B氏は語る。
私のこの左の頬にある痣《あざ》の由来を話せというのですか。御話し致しましょう。いかにもあなたの推定されたとおり、生れつきに出来た痣ではなくて、後天的に、いわば人工的に作られたものです。これはある男の暴力によって作られたものですが、皮下出血のために、この通り黒みがかったものとなりました。もう三年になりますけれど、少しも薄らいで行きません。なに蝙蝠《こうもり》の形に似て居ますって? 私の名は「安《やす》」ではありませんよ。玄冶店《げんやだな》の妾宅《しょうたく》に比べるとちとこの法医学教室は殺風景過ぎます。
余談はさて措《お》き、この痣の由来を物語るには、どういう動機で私が法医学
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