ら血の泡を吹き出して、それが老婆の腸の上に流れかかった有様にはさすがの司法官たちも顔をそむけました。
然し私は、真犯人がこのくらい苦しむのは当然のことだと思いました。出来るならば私はもっともっとはげしいショックを与えて犯人を苦しませてやりたいと思いました。むかしの拷問は一種の刑罰法と見做《みな》すべきものでして、犯人を苦しませるには誠によい方法ですが(尤も主として肉体的の苦しみを与えるだけですから物足りませんけれど)犯人でないもの迄が時として同じように苦しみますから、それは拷問の最大欠点です。バーンス探偵の「サード・デグリー」は精神的拷問ですから、頗《すこぶ》る興味がありますが、これは主として訊問によるのでして、止むを得ず所謂《いわゆる》鎌をかけねばならず、それによって幾分か、無辜の人をも苦しめる欠点があります。然るに私の考案した「腸管拷問法」は、犯人でないものには何の苦痛も与えません。始めから終り迄沈黙の裡に事を行うのですから、人体解剖を見馴れぬ人には、多少の刺戟を与えるかも知れませんが、多くの場合、十中八九まで真犯人らしいと思われる者に対して行われるのですから、精神的拷問法として
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