した。通常切り出した腸について、生理学実験を行うときには、切り出すべき腸管の長さは五寸ぐらいでありますが私のは目的が目的ですから、少くとも一尺五寸位を切り出すことにきめました。生理学実験の際には直径七八寸、高さ一尺ぐらいの一端に底のある円※[#「土へん+壽」、第3水準1−15−67]形のガラスの容器の中に、更に腸のはいる位のガラスの容器を装置し、その中にタイロード氏液と称する透明の液を入れ、腸管の両端を糸でしばって液中に縦に浮游せしめて下端を器の底に固定し、上端を糸で吊り上げ、糸の先に梃子《てこ》をつけ、腸の運動を梃子に伝わらしめて、之を曲線に書かしめるのですが、私の方法はそれとちがって、大きい方のガラス器に直接タイロード氏液を入れ、切り出した腸管の両端を糸でしばり、上端だけを糸で吊り上げて容器の中に浮游せしめることにしたのです。そうして、タイロード氏液を三十七度内外に保つために、下からブンゼン瓦斯《ガス》灯によって暖め、なお、酸素を通ずるために、ガラス管を液の中に入れました。生理学の実験では、切り出した腸管全部を液の中に浸しますが、私は、糸で吊り上げた一端を三四寸空気の中に出し、もっ
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