い」
 と答えました。
「そんなにすぐ分かってたまるものか」
 と俊夫君は笑いながら言いました。
「では俊夫君にもまだ分からぬ?」
「分からん!」
 これまで俊夫君は、「分からん」とか「できん」とかいう言葉が大嫌いで、よほど困ったときでないと使わないのですが、この暗号はむずかしいと見えて、苦い顔をして吐きだすように言いました。
 それから俊夫君は、その切り抜きを私の手から奪って、およそ十分ばかり一生懸命に見つめていましたが、やがて、
「兄さん、この針で孔のあいている字だけを写し取ってください」
 と申しました。
 私は、白紙の上に左のとおり写し取りました。
[#ここから2字下げ]
を行って での写真 違って今ま 能と見做さ た赤をは 黄や緑 至る迄そ く白い様に しむる事 に写真術 影者が之を とに最もお
[#ここで字下げ終わり]
 俊夫君は私の差し出した紙片を手に取ってしばらく見ていましたが、
「兄さん、こりゃとても一時間や二時間で解ける暗号でないよ。まあ、ゆっくり考えよう」
 と申しました。
 午後になって、俊夫君は、あの新聞の切り抜きが、何日の何新聞にあるか調べて、できるならその
前へ 次へ
全26ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング