ろう」
 俊夫君は新聞紙を丁寧に開きました。それは二寸四方位の小さな紙片でした。俊夫君は、すかして見たり裏返して見たりしていましたが、
「叔父さん! これを借りてゆきます」
 と申しました。
「いいとも。それで犯人の目星はついたか?」
「まだ分かりません。しかし二三日うちには見つけます」
 叔父さんの家《うち》から帰ると俊夫君はすぐ金庫の上の指紋の写真を現像して、手紙にあった指紋の写真と比較しました。二つの指紋はぴったり一致しました[#「二つの指紋はぴったり一致しました」に傍点]。それから俊夫君は例の新聞紙片を私に渡して言いました。
「兄さん、これ、何だか分かる?」
 見ると三面記事の一部分で、裏は広告でしたから、別に何の意味があろうとも思えませんでした。
「すかしてごらんなさい!」
 言われるままにすかして見ると、活字の所々に針で穴があけてありました。
「それは暗号だよ」
 と俊夫君は申しました。私は左に、針で穴のあけてある文字に、点を打ってその新聞記事を写し取ってみましょう。
[#ここから1字下げ]
「本郷駒込富士前の理化学研究所、近藤研究室で、整色写真化学の研究を行って[#「を行
前へ 次へ
全26ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング