ろう」
俊夫君は新聞紙を丁寧に開きました。それは二寸四方位の小さな紙片でした。俊夫君は、すかして見たり裏返して見たりしていましたが、
「叔父さん! これを借りてゆきます」
と申しました。
「いいとも。それで犯人の目星はついたか?」
「まだ分かりません。しかし二三日うちには見つけます」
叔父さんの家《うち》から帰ると俊夫君はすぐ金庫の上の指紋の写真を現像して、手紙にあった指紋の写真と比較しました。二つの指紋はぴったり一致しました[#「二つの指紋はぴったり一致しました」に傍点]。それから俊夫君は例の新聞紙片を私に渡して言いました。
「兄さん、これ、何だか分かる?」
見ると三面記事の一部分で、裏は広告でしたから、別に何の意味があろうとも思えませんでした。
「すかしてごらんなさい!」
言われるままにすかして見ると、活字の所々に針で穴があけてありました。
「それは暗号だよ」
と俊夫君は申しました。私は左に、針で穴のあけてある文字に、点を打ってその新聞記事を写し取ってみましょう。
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「本郷駒込富士前の理化学研究所、近藤研究室で、整色写真化学の研究を行って[#「を行
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