入っているばかりであった。
金庫は符号錠であるから符号を知らぬものには開けられない。その符号は叔父さん一人知っているだけなのに、こうして開かれたところを見ると、昨日《きのう》金庫を閉め忘れたのかもしれぬ。それに窓や戸を検《しら》べても外から入った形跡がないから、犯人は家族のものとも思われぬではないが、家族は叔父さんと叔母さんと女中と下男とで、女中や下男は長年いて正直なものばかりであるから疑う余地は少しもない。……
俊夫君は叔父さんの話が終わると、先日届いた無名の手紙の話をし、拡大鏡を取りだして金庫を検べました。金庫の前面にかすかに一つの指紋がついていましたので、俊夫君は鉛白粉《えんぱくふん》をかけて指紋をはっきりさせ、写真に撮影しました。
金庫の内外の検査が終わると、俊夫君は書斎の窓や庭や、その他のところを綿密に検べ、それが終わると、書斎へ戻って、
「叔父さん、ダイヤのサックはどこにあります?」
と尋ねました。
叔父さんは机の引き出しからサックを出して渡しました。中には新聞紙が入っていました。
「叔父さんが入れたのではない?」
「そうとも」
「では犯人でしょうか?」
「そうだ
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