は何事もなく過ぎましたが、四日目の朝、赤坂の叔父さんから、俊夫君に、急用ができたからすぐ来てくれと電話がかかりました。俊夫君はハッと思ったらしく、探偵用道具の入った鞄を私に持たせて、叔父さんの家にかけつけました。
先方へ着くと、叔父さんは待ちこがれたと言わぬばかりに、私たちを書斎に案内して、
「実は俊夫! ゆうべ、ダイヤを盗まれたんだ!」
「えっ?」
といつもあわてたことのない俊夫君も、少しく顔色を変えました。
「俺にもお前にも大切な品だから、まだ警察へは届けてないが、お前一人で探偵できるか?」
と叔父さんは尋ねました。
「一人でやります」
と俊夫君はきっぱり言いました。
「よろしい。それでは盗まれた次第を話そう」
こう言って叔父さんは次の話をしました。
紅色ダイヤはいつも書斎の金庫の中にあるが、今朝《けさ》食後に叔父さんが、書斎で新聞を見ようと思って入ってこられると、金庫の扉があいていたので、ハッと思って調べてみると、別に何一つ失っていない。ところが念のためにダイヤモンドの入っているサックを開けてみると、驚いたことに、中にダイヤはなくて新聞紙の片《きれ》を細かに折ったのが
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