にいろ》のダイヤモンドがあります。それは今までたびたび盗賊にねらわれたことのあるくらい有名なものでして、叔父さんは俊夫君が、この次の難問題を解決したら、ご褒美にやろうと約束しました。
 俊夫君は平素それを欲しがっていたので、何か大事件があってくれればよいと思っていました。ところが、どうでしょう。その紅色ダイヤが叔父さんの家から紛失したという、叔父さんと俊夫君にとっては、この上もない大事件が突発したのです。
 九月のある日、俊夫君の所へ茶色の封筒の手紙が届きました。俊夫君はいつも手紙の封を切る前にまずその紙質《ししつ》、文字、消印などを検査しますが、この封筒には差出人の名が無かったので、非常に注意深く検査して、やがて小刀で封を開き、ピンセットで中身をはさみだしました。出てきたのは半紙《はんし》半分の白紙でした。
「兄さん、この手紙を読んでごらん!」
 と俊夫君は白紙を広げて言いました。私は手に取りあげようとすると、
「ああいけない。指紋を採るから触ってはいけない」
 と申しました。けれど、何も書いてないのですから、読もうにも読みようがありません。
「何と書いてあるか分かるか?」
 と俊夫
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