イヤだ!」
こう言って、叔父さんは上着の内側のポケットから、同じようなサックを取りだして、震える手であけて見ました。
「やっ、贋物《にせもの》だ! いつの間にすりかえられたんだろう?」
と叔父さんは不思議そうに俊夫君の顔を見つめました。
私は何が何だか分からぬので、しばし、呆然として、そこに立っていました。
「叔父さん、まあおかけなさい。兄さんもそちらへおかけなさい」
こう言って俊夫君は、得意げに今までの探偵の筋道を語りはじめました。
「叔父さん、叔父さんは、このダイヤを僕にくれてやろうと思って、僕の力をためしたのでしょう? はじめ、あの匿名の手紙を見たとき、見覚えのある筆跡だと思いました。それから手紙の上の指紋をとりましたら、それは叔父さんの指紋でした。いつか僕が、お父さんやお母さんや、叔父さんの指紋を集めたことがあったでしょう。僕はそれと比べてみたのです。
それから金庫の上にあった指紋も叔父さんのでした。ですから叔父さんが犯人かとも思ったんですけれど、叔父さんの紙を誰かが盗んで使ったのかもしれず、金庫の上に叔父さんの指紋のあるのは、当たり前であるし、それにあの暗号が気にな
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