イヤだ!」
 こう言って、叔父さんは上着の内側のポケットから、同じようなサックを取りだして、震える手であけて見ました。
「やっ、贋物《にせもの》だ! いつの間にすりかえられたんだろう?」
 と叔父さんは不思議そうに俊夫君の顔を見つめました。
 私は何が何だか分からぬので、しばし、呆然として、そこに立っていました。
「叔父さん、まあおかけなさい。兄さんもそちらへおかけなさい」
 こう言って俊夫君は、得意げに今までの探偵の筋道を語りはじめました。
「叔父さん、叔父さんは、このダイヤを僕にくれてやろうと思って、僕の力をためしたのでしょう? はじめ、あの匿名の手紙を見たとき、見覚えのある筆跡だと思いました。それから手紙の上の指紋をとりましたら、それは叔父さんの指紋でした。いつか僕が、お父さんやお母さんや、叔父さんの指紋を集めたことがあったでしょう。僕はそれと比べてみたのです。
 それから金庫の上にあった指紋も叔父さんのでした。ですから叔父さんが犯人かとも思ったんですけれど、叔父さんの紙を誰かが盗んで使ったのかもしれず、金庫の上に叔父さんの指紋のあるのは、当たり前であるし、それにあの暗号が気にな
前へ 次へ
全26ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング