かりますと、先方もさるもの、猛然として私をつきのけようとしましたので、次の瞬間、ドタン、バタンという格闘が始まりました。
 俊夫君もこのとき犯人の方へ駆け寄って、何事かしていたようですが、やっと私の力がまさって、犯人に手錠をはめようとすると、俊夫君は、
「兄さん、そうしなくてもよい。叔父さん、色眼鏡と付《つ》け髯《ひげ》をお取りなさい」
 と叫びました。
 私はハッと思って手をはなしました。
「俊夫! 一体このいたずらは何のことだ!」
 と言って、立ちあがって、色眼鏡と付け髯をはずした男の顔は、まがいもなく赤坂の叔父さんでした。
「叔父さんすみません。けれど紅色ダイヤの犯人をつかまえる約束だったでしょう?」
「それはそうさ!」
 と叔父さんは塵埃《ほこり》を払いながら、苦い顔をして申しました。
「叔父さんがその犯人ですからつかまえようとしただけです。その代わり紅色ダイヤはお返しします」
 こう言って、俊夫君はポケットからサックを取りだし、蓋をあけて叔父さんの前に差しだしました。
 燦然《さんぜん》たる光を放つダイヤモンドを見た叔父さんは、顔色をかえて驚きました。
「こりゃ、本当の紅色ダ
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