私の頭につかまって、足をばたばたさせました。
「どうしたんだ!」
私は呆気《あっけ》にとられて尋ねました。
「犯人が分かったよ!」
「え?」
私は俊夫君の言葉を疑わずにいられませんでした。
「ああうれしい」
こう言って俊夫君はまたもや室《へや》の中を走りまわりました。私は『読売新聞』を開いたばかりで、どうして犯人が分かったか、さっぱり見当がつきませんでした。
「犯人は誰だい?」
「それはいま言えない、今日はもうこれ以上聞いては嫌だよ」
あくる朝俊夫君は、昨夜《ゆうべ》、叔父さん宛《あ》てに書いたという手紙を投函してくると言って出かけたまま、正午《ひる》頃まで帰ってきませんでした。俊夫君は出がけに兄さんについてきてもらっては困ると言ったので、私は家にとどまりましたが、何だか心配になるので、その辺を捜しに出かけようかと思うと、俊夫君はにこにこして帰ってきました。
そして私が、どこへ行ったか尋ねぬ先に俊夫君は私に向かって、今晩七時に紅色ダイヤを盗んだ犯人が、ここへ訪ねてくるから、兄さんは力いっぱい働いて捕らえてくれと申しました。
犯人を捕らえにゆくのならとにかく、犯人がこちらへ訪
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