が虫をつぶしたような顔をしていました。
「どうしたの?」
と私は尋ねました。
俊夫君は机をたたいて、
「馬鹿にしやがる」
と怒鳴りました。
「え?」と私はびっくりしました。
「逆さまに読んでごらん!」
「トシヲクンニワカルモノカ」(俊夫君に分かるものか)
またしても犯人のいたずら! せっかく苦心したあげく[#「あげく」に傍点]がこれでは、俊夫君の怒ったのも無理はないです。
意外の犯人
私は俊夫君をどうして慰めてよいかに迷いました。そのとき私はふと、今日、理化学研究所を訪ねたことを思い出しました。今まで暗号の方に気をとられて、私は肝心の用事を話すことを忘れ、俊夫君も、それを気づかずにいるらしいのでした。
「俊夫君、すっかり忘れていたが、実は、この切り抜きの記事のついている新聞を買って持ってきたんだ」
俊夫君はあまりうれしくもない顔をして、私の差しだした新聞を受け取ったが、やがてその新聞を開いたかと思うと、急にうれしそうな顔になって、
「兄さん、有り難う※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
こう叫んだかと思うと、さっき暗号の解式を発見したときのように、こおどりしながら
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