本はなし、まったく僕一人の力で解かねばならぬからね。まず僕はこの『を行って』『での写真』『違って今ま』というのが一つ一つの文字すなわち『ア』とか『イ』とかをあらわしているにちがいないと思ったんだ。
ところでこの十二組のうち、どれを見ても五字より多いのはないから、何か『五つ』に縁のあるものはないかとしきりに考えてみたんだ。はじめ盲人の点字を暗号になおしたのではないかと思ってみた。が点字は『六つ』からできているのでその考えは捨てたんだ。
ちょうど兄さんが帰ってきたときに、仮名は仮名としてある記号を代表し、漢字は漢字としてある記号を代表するにちがいないというところまでこぎつけたんだ。すると叔父さんから電話がかかってきただろう。僕ははっと思ったよ。……分かったかい、兄さん?」
「どうも分からぬね」
「だって電話と言やすぐ思い出すだろう?」
「え、何を?」
「仮名がトンで漢字がツーさ!」
「何だいそれは?」
私はますます分からなくなりました。
「困るなあ電信符号だよ!」
こう言われて私は初めてなるほどと思いました。トンは電信符号の―、ツーは――で、しかも、文字はトンツーの五つ以下から成っ
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