たった今?」
「叔父さんから電話がかかったので分かりました」
「それは妙だなあ!」
「妙でしょう?」
「何という暗号だい!」
「これから解くのです」
「そうか、しっかりやってくれ。ただちょっと様子を尋ねただけだ」
「しっかりやります。さようなら」
電話がかかったので暗号の解式が分かったとはどういうわけだろうか、それは私にも謎の言葉でした。私がそれを尋ねようとすると、俊夫君は書棚へかけつけて、しきりに書物を繰りひろげて見ていましたが、しばらくして、
「困ったなあ、あれの書いてある本がなくちゃ」
とさも落胆したように申しました。
「僕が買ってこようか?」
「いや、青木でいい」
こう言って、机の上のベルの釦《ボタン》を押すと、しばらくして本宅の書生の青木が入ってきました。俊夫君は紙片に何か書いて、青木に渡しながら、
「この本を、角の丸山書店で、大急ぎで買ってきてくれ」
と申しました。
「兄さん今日は本当に苦しんだよ」と俊夫君は机の前に腰かけてにこにこしながら申しました。
「何しろ、これは日本の暗号だから、外国の書物を見たとて分かるはずはなし、それかといって、日本には暗号のことを書いた
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