した愛らしい顔と、大きな碧《あお》い眼と、やさしい口元とは、見るものを魅せずには置かなかった。ところが、彼女は非常な山だしの御転婆で、夏はいつも跣足《はだし》で歩きまわり、年が年中、髪を結ったことがなく、房々とした金髪は、波を打って肩の上に垂れかかり、頸や腕は、かなりに日に焼けていた。ハリーはいつしか、この娘と恋に落ちたのである。
彼はしかし、そのことを父に告げる勇気がなかった。父は由緒ある家系を誇る昔し気質《かたぎ》の人間であるばかりでなく、娘の家を常々卑しんでいて、ことにエドナの性質を見抜いて、「鬼女」という綽名《あだな》をつけた程であるから、到底二人の結婚を承諾してくれまいと思ったからである。ところが、二人の恋は段々|募《つの》り、結婚してしまったら、父も文句は言うまいと考え、ハリーはひそかにエドナを紐育へ連れて行って結婚した。これを聞いた父は大に怒って、どうしても二人を我が家へ寄せつけなかったので、二人は致し方なく、程遠からぬ所に他人の用地を借り受けて自活することにした。
一しょに暮して見ると、ハリーは嫁の性質が父のつけた綽名にふさわしいことを知った。彼女は手におえぬじゃじ
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