誤った鑑定
小酒井不木
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)出鱈目《でたらめ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一々|穿鑿《せんさく》する
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ははははは」[#「」」は底本では「』」]
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晩秋のある夜、例の如く私が法医学者ブライアン氏を、ブロンクスの氏の邸宅に訪ねると、氏は新刊のある探偵小説雑誌を読んでいた。
「探偵小説家というものは随分ひどい出鱈目《でたらめ》を書くものですね」と、氏は私の顔を見るなり、いきなりこういって話しかけた。
「え? 何のことですか?」と私は頗《すこぶ》る面喰《めんくら》って訊ね返した。
「今、ジョージ・イングランドの『血液第二種』という探偵小説を読んだ所です。その中に出て来る医者が、血液による父子の鑑別法を物語っていますが、実に突飛《とっぴ》極まることを言っていますよ、まあよく御聞きなさい。こうです。父と子の血液を一滴ずつ取って、それを振動器の中へ入れて、まぜ合せると、もし真実の父子ならば、血液を満している微小な帯電物の振動が一致するというのです
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