。電子ではあるまいし、何と奇抜な説ではありませぬか?」
私もそれを聞いて思わず吹き出してしまった。
「それじゃまるで支那の大昔の鑑別法そっくりですね」と私は言った。
「それはどんな鑑別法ですか?」と氏は急に真面目な顔をして訊ねた。
「支那の古い法医学書に『洗冤録《せんえんろく》』というのがあります。その中に、血液による親子の鑑別法が書かれていますが、それによりますと、親と子の真偽を鑑別するには、互に血を出し合って、それを、ある器の中にたらすと、もし親子であったならば、その血がかたまって一つになり、もし親子でなかったならば、よく混らないというのです」
「そうですか、いや却ってその方がむしろ科学的鑑別法に近いじゃありませんか、現今では、血球の凝集現象の有無から判断するのですもの」こう言って氏は更に雑誌を取り上げて上機嫌で語り続けた。
「それから、その医者はまた言います。人間の血液は四種類に分けられていて、親と子は同一種類に属するものだと。四種類に分けられているとまでは正しいですけれど、親と子が同一種類だということは、少し考えたら、言えないことではありませんか。父と母とが同一種類の人ならば
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