して笑った。老人は頗《すこぶ》る面喰《めんくら》ったが、
「はっはは、これは困った」と言いながら、自分の居間へ去ろうとした。
「本当は私にくれたのよ、ね、ジョン」と妹は話かけた。
「本当にそうなの! ジョンさん」と夫人も老人に向って訊ねたが、もうその時老人は室《へや》の外に出ていた。
 夫人はそれから妹に向って冗談を言いながら、紅い紐を解くと、果して中から菓子箱があらわれた。
「お菓子は、分けてあげるから、おとなしくしていらっしゃい」
 こういって夫人は蓋を開けた。と、その瞬間、箱は異常な音響を発して、夫人の身体は見る影もなく破壊された。ヘララは直ちに右眼を失ったが、傷いた左眼も数日後潰れてしまった。妹は諸所に火傷や創傷を受けたが、生命には別条なく、老人オファレルはその時その室に居なかったので災難を免れた。
 急報によって駈けつけた警官は、現場を検べ、事情を聞き取った後、犯人は正しく前二回と同一人であることを推定した。しかし今回は郵便で来たのではなく、老人が直接に持って来たのであり、かつ老人自身は都合よく災を免れたのであるから、警官は当然老人は怪しいと睨《にら》んで、その場から警察に拘
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