取った人であった。常習性犯罪者に対して、彼はいつも思い切って苛酷な判決を与えたから、盗賊たちは彼を非常に怖れ且《かつ》憎んでいた。丁度その頃イタリア人から成る「黒手組」の裁判が行われて、新聞紙を賑《にぎ》わしていた時であって、彼の許へは一日何通となく脅迫状が舞い込んだのであった。それらの脅迫状はいずれも、拙《まず》い文章で書かれてあったが、文章の構造から、差出人はイタリア人であることが、想像された。そして中には、「用心せよ、爆烈弾を見舞うぞ」というような文句の書かれたものさえあった。それにも拘わらず彼は、「黒手組」に対して重刑を申渡した。
 ある晩、彼が裁判所から、リヴァーサイド・ドライヴの自宅に帰ると、留守中に一個の小包が届いていた。それは菓子箱か、葉巻煙草の箱かと思われる位の大さで、白い紙で包まれ紅い紐がかけてあったから、彼は何気なしにそれを開いて見ようと思って、取りあげたが、意外に重かったので、これはと思って下に置くと同時に、先日来の脅迫状のことを聯想したのである。
 直ちに警察に電話をかけて委細を告げると、探偵エガンは時を移さず駈けつけた。このエガンという探偵は今まで爆発物を度
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