々取り扱って来たが、一度も怪我をしたことがなかったので、いかにも自信ありげに、その小包を手に取って、先ずその紐を解き包紙を除くと、中から菓子箱が出て来た。しかし重さが菓子に似合わないので、彼は極めて注意深く、徐々に蓋をあけかけた。
 彼が僅かに一分か一分五厘あけた時、ドーンという音がして、エガンは壁の方に突き飛ばされ、判事は地面に腹這いになった。が、幸にしてエガンが右手をもぎ取られただけで、二人とも生命《いのち》には別条なかった。散弾は四方に飛んで、硝子やその他の家具を破壊した。このことあって以来、エガンは手に繃帯したまま出勤していたが、精神的に打撃を受けたためか、まるで別人のようになり、程なく勤務中に頓死した。
 判事ロザルスキーに贈られた小包は、ウォーカーに贈られたものと全く同じであった。銅線も、瓦斯管も寸分ちがわないばかりか、紙の上に書かれたタイプライターの文字にも前に書いた特徴が立派にあらわれていたから、犯人は正しく同一人であると推定された。
 しかしながら警察はそれ以上の手がかりを掴むことが出来なかった。ブレスナン探偵はそれ迄に、エリオット・フィッシャー会社製のタイプライター
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