も火薬製造に用うる薬品が入っていて、なおその傍《そば》には銅線の玉や、包装に用うる白い紙や、短かく切られた瓦斯《ガス》管があった。
最後にプライスは、机の上にあったタイプライターで書かれた書類を取り上げた。一目見るなり彼は部下を顧みて言った。
「悪魔はとうとう自分を滅ぼしたよ」
プライスは時を移さず病院を訪ね、主治医に事情を話してヘンリーを訊問した。ヘンリーは細長い顔をした、薄い唇を持った男で、女のようなやさしい声を出した。彼は非常に衰弱していたが、探偵の質問に対して、無煙火薬の発明に取りかかっていたのだと説明した。
彼はウォーカー及びロザルスキーに贈られた爆弾については何も知らぬときっぱり答えた。
「瓦斯管の切ったのは何にするつもりですか」と探偵は訊ねた。
「あれはクロトナ公園で拾って持ち帰ったのです。小さく切ったのは、薬品をつめて、田舎へ行って、無煙火薬の実験をするつもりでした」
探偵は一先ず訊問を打ちきって、探偵局に帰ると同時に、区役所に人を走らせて、ヘンリーの事務室のタイプライターを調べさせると、果して、それは、ブレスナン探偵が長い間捜し求めていたものであった。
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