め、総監は自ら警視庁へ電話をかけて、現場捜索その他の手順を命令した。
前後約十分間停電していたため、犯人が兇行後逃げ出して行ったという可能性は十分あった。しかし、停電は外相官邸ばかりでなく、その附近一帯に亙《わた》っていたから、停電が起ってから、犯人が外部から侵入したものとは考え難く、犯人は変装して客となってはいりこんでいたか、或は現にホールの中に居る客のうちの一人かも知れなかった。警視庁から駈けつけて来た捜索係も、ただ外相が自殺したのでなく、他殺されたのだという事実をたしかめる外、何の得るところがなかった。警視総監は首相及び内相と鳩首して、形式的にでも、来賓の身体検査を行うか否かを相談したが、事が外交の機微に関係していることとて差控えることとなった。
かくて人々は、いずれも暗い気持を抱きながら、段々はげしくなった風雨を冒して帰って行った。I総監は捜索の人々と共に深更まで外相官邸に留まって、今後の捜索方針を凝議したが、犯人捜索の責任は自分の双肩にかかっているので、さすがに興奮の色をその顔に浮べていた。
三
局部的解剖の結果、外相の心臓から一個のピストルの弾丸が取
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